本学の創設者・高木兼寛(1849−1920)は、明治14年(1881)5月1日、東京慈恵会医科大学の前身・成医会講習所を開設しました。今に続く日本最古の私立医学校の誕生です。高木は若き日、英国のセント・トーマス病院医学校(King’s College London)に留学し、そこで人道主義に基づいた英国医学を十分に学び、帰国後は、病める人を大事にする病院や医学校を是非つくってみたいと考えたのです。
その頃、日本の医学界は研究至上主義的な傾向が強く、病人を医学の研究材料のように考える風潮がありました。英国医学を身をもって体験して帰国した高木は、松山棟庵と共に英国流の人道主義、すなわち病に悩む人間を中心に考える学風の医学校を設立しようと決心したのです。こうして設立されたのが、成医会講習所です。本学の建学の精神「病気を診ずして病人を診よ」は、このことを端的に表現したもので、その教育の原点が「人間愛」にあることはいうまでもありません。